★其の壱 トラフグ(虎河豚)
★フグ目フグ亜科フグ科トラフグ属トラフグ
フグ目全体でなんと500種、フグ科でも120種程知られている。
日本には9属37種が棲息している。
食用可能な種類はフグ亜科ではハリセンボン3種、
フグ科トラフグ属13種、サバフグ科3種、ヨリトフグ科1種、
モンガウカワハギ亜科ではハコフグ科1種で、合計22種。
※フグ毒を有するのはフグ科のみ。
★フグ毒
もともと速く泳げないので、種族維持の為、体内から
毒素(テトロドトキシン)を放出して身を守る。
毒素は青酸カリの10倍でサリンと同等の殺傷力を持っている。
1匹のトラフグで、13人を殺す程の猛毒である。
が、この毒には沈静作用と病原菌に対しての防御作用もあり、
現在痛み止めの医薬品として応用されている。
中国では、末期ガンの患者に鎮痛剤として効果を上げている。
なお、ふ化後約1週間までは、毒性をもつが、
その後1週間の間毒性がなくなり、さらに約1週間で
再び毒性を持つようになる。
産卵直前が最も毒性が強く、「菜の花 時のふぐは怖い」
とよく言われる。
★由来
古来フグは「ふく」と呼ばれ、現在でも下関では「ふく」と呼ぶ。
漢字では「布久」または「鰒」と書いた。
口に含んだ海水を海底に吹き付けて餌を探す行動や
釣り上げた時、プープーと音を吹き出す姿から命名されたのだろう。
布久の表記は平安時代以降、鰒の表記は中国の長江時代などに
棲息するメフグがブーブーと豚のように鳴くからという説がある。
ちなみに「海豚」はイルカ。
★漁場と漁法
本州中部以南から東汁海に多く棲息。
海外物は日本海南部・黄海・朝鮮半島付近、
近海物は響灘・玄海灘産から操業。近年は乱獲もあり。
漁獲量が落ち遠州灘まで出漁することもあるが、
シーズンが始まると、周防灘、伊予灘、燧灘など
瀬戸内海産ものが高値を呼ぶ。
一本釣り、浮延縄、底延縄、底引網などがあり、本格的な
延縄漁法は給島(すくもしま…山口県)の漁師が開発した。
これにより、山口県のフグ漁は日本一となった。
南風泊(はえどまり)漁港は全国の漁獲量の90%を
占める2500トン程の水揚げを誇る。
★ふぐ食禁止令
室町時代以降たびたび出された。藩士が中毒死すると
家禄を没収されたそうである。
豊臣秀吉も朝鮮出兵の際、下関に募集した兵が多勢中毒死して
困りはてたと言われている。
★ふぐ食解禁令
永らく続いた禁止令を解禁したのが、伊藤博文である。
彼は明治21年、後半下関条約の舞台となる。料亭、春帆桜
で、禁止のフグを食べ、あまりの旨さに驚き、時の山口県知事
原保太郎に命じ全国にさきがけて解禁令を出し、
明治25年には東京も解禁されたが、
なんと大阪は遅れる事半世紀以上、昭和16年になって
ようやく解禁された。
★フグの旨味
よく噛んだ時の甘味は普通白身魚では遊離アミノ酸が多いが、
フグはグリシンとリジンが多いので甘味も強く感じられる。
コク味はクレアチンが引き出している。
皮にはコラーゲンがやわらかいゼラチンとなり、硬いエラスチンは
そのまま残っている。その適度の弾力性もフグならではの
食感となっている。
★白子
人によってはフグで一番うまいのは白子(精巣)だという。
コモンフグ、ワサフグ、ヒガンフグ以外は白子に毒はない。
※中国に伝わる白子話をひとつ。
中国では白子を「西施乳」といって珍味の一つに
数えられているが、「西施」とは春秋時代の越の美女の名前。
越王に愛されるが、それが越王の弱点となり、呉に敗れる。
西施は呉王のもとに送られるが、やがて呉王も西施の色香におぼれ、
国を傾けてしまう。
二つの国をも傾けさせた美女、西施の乳房だというのだから
白子の味のよさを讃える言葉といえる。
★最後にフグを詠んだ俳句を三句
ふく汁の 我活きて居る 寝覚哉 与謝蕪村
五十にて ふくとの味を 知る夜哉 小林一茶
あら何ともなきや きのふは過ぎて ふくと汁 松尾芭蕉